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過去の注目書展

東山一郎書作展 
東山一郎書作展

 漢字のメッカ謙慎書道会で、特異なかなを発表する東山一郎は、還暦、古稀に続いて、傘寿を記念して、通算5回目の個展を開催した。この個展には、いつものようにここ10年間に発表した作品から選り抜かれた大字、中字、小字がなを一堂に並べ、また手作りの屏風を絢爛豪華に仕立てて、今様、琳派調の煌びやかな世界を披露する。また代表的な古筆を倣書で一堂に並べる。この仕事は、一郎のかなの原点が古筆から成り立つ流れの上で、その綿密な追求がよく窺える。全体に流れる線を澄んで伸びやかにすっきりと書き流す気脈には、董其昌の気品を尊ぶ法の尊さを彷彿とさせるものがある。大字、中字、小字のいずれも同じ筆致で書き通し、バランスを整える緻密さは現代かなの中で極めて異彩であり、ここに現代の古典的モダニズムがある。

会期: 7/1 - 6
会場: 東京銀座画廊・美術館


第52回 東方書展 
第52回 東方書展

第52回東方書展は、全体に会場が明るくすっきりとなり、書の表情に溌剌とした気風が漂う。これは長老達が次々と亡くなり、会の中心が一気に若返り、それぞれの作品に積極的な表現意欲が漂いだしたからである。中でもかな作品の台頭とその書風の多様化には目を見張る物があり、漢字大国だった東方は今や、かなの注目すべき展覧会となりつつある。とはいえ、漢字の幅広い表現にはニューアカデミズムの遺風が残り、特に2行物、3行物にはしっかりとした表情が窺える。作品をじっくり盛り上げるところに東方の魅力が潜んでいる。

会期: 7/1 - 6
会場: 東京都美術館


創立60周年記念書道同文展 
 昭和24年に戦前の書壇を2分した東方書道会の再現を求めて設立された書道同文会は、旧東方書道会の創立記念日に発起人会を開催し、翌年第一回展を日本橋三越本店で開催した。だが、創立会員の分散で、最終的には高塚竹堂を中心とする一派となる。かなを中心に漢字、現代文に取り組み、各自が自分の書風を楽しむ方向で進み、日展や新聞社の総合展には、不参加の姿勢を貫いている。この高潔な在野精神から60回記念展は歴代会長の遺作を並べ、会員は意欲的な大作を出品する。鈴木静村会長、池田群竹副理事長、槍田朝雨理事長を中心に、小山雲涯、立川遊汀、山田順子、水貝潮華、戸張丘邨、金子恵華など、斬新な仕事を披露し、また、中堅作家が大作で意欲を示す。書風の特色は穏当な純正さをわきまえた仕事で、大らかさがあるのが特色だ。
会期: 6/24 - 29
会場: 東京都美術館


第36回日本の書展・東京展

注目の書展 日本の書展東京展

昨年、新しく開館した国立新美術館の最初の展示となった日本の書展東京展の会場は、作品がゆったり立体的に展示され、新しい書道展の幕開けを予知させる見事な会場だった。

ところが今年の第36回日本の書展東京展は、書道界独特の数を集める密集展示の書道展と一転し、期待は外れた。集めた作品の内容とレベルは、現代書の伝統派の全貌を一面で示し、構成は現代書壇巨匠21名は全員が日展評議員以上、現代書壇代表は82名で、大半が日展作家で非日展では恩地春洋、加藤湘堂、小林抱牛の3名で、日展至上主義である。委嘱の96名は関西展、中部展、東京展、九州展と仕分けされ、東京展の30名のうち非日展は飯高和子ただ一人である。招待作家は558名で、年間の活躍が嘱望されるひと、秀抜展は1082名で、各書道団体から推薦されている。作品には刻字、前衛書は無く、漢字、かな、現代文、篆刻から成り立つ。主な作家は、杉岡華邨、高木聖鶴、古谷蒼韻を筆頭に、伝統派書派の主力が中品の作品を出す。

会期: 6/12 - 22
会場: 国立新美術館


第47回書象展

注目の書展 書象展  第47回書象展は、昨年オープンした新国立美術館の2回目の展示で、超大作による俊英選抜5人展を特別企画にし、今年はその2回目である。これに会の創立者、上条信山の遺作3点を並べ、幹部が全紙大に大字作品を中心に意欲作を並べる。信山流の緻密で、厳格で緊張を呼ぶ書風は、会全員に反映し、信山の威風の片鱗を呼ぶところに作者は筆技を磨きこむ。こうした中で、田中節山は木簡を取り入れて、太くこんもりする動きに瞬発を点、曲線に出し、市澤静山は、爨宝子碑から地霊を書き、霊の渇筆に率意美の自然さを表す。内藤望山は潤筆さに暖かさを込め、中村ぎ山は動きのリズム、山口啓山は覇気など、それぞれ持ち味をだす。超大作の横書きを書いた宮本耕成と、調和体の大作5曲を書いた高瀬霞山、行草の渇筆を生かす大澤梢光、光明皇后樂毅論に心酔して線を揺する竹内墨洋、多字数の楷書を綿々と書く石丸暁風など、活気を見せる。なお、出品参加者は1315名である。
会期: 6/12 - 22
会場: 国立新美術館


日本の詩歌と書の世界 
日本詩文書協会 昭和48年に近代詩文書作家協会として創立された、日本詩文書作家協会は、創立35周年を記念し、60回記念展ともなる。参加は同協会に所属する2700余名の中から、今年は日本の詩歌をテーマにして、物故作家の作品にまで素材を広げて、協会の最高顧問1、常任顧問1、顧問3、会長1、理事長1、副理事長5、常任理事14、理事21、幹事3、参与7、評議員186、正会員197名の計434点が二つの会場に分けて並ぶ。

 現代文は表現意欲を前面にとりながら、読みやすい工夫が施され、半世紀に及ぶ現代書制作運動の一つの成果を示す。今年は作品に伸びやかで楽しい表情がいくつも見られ、中野北溟、宇山栖霞、船本芳雲、石飛博光、辻元大雲、大平匡昭、砂本杏花、室井玄聳、加藤幸道、佐久間康之、竹内幸、渡部曾山など、工夫の豊かな作品が並び、会場は多くの人で賑わう。反面、表現主義の主張が強く、伸びすぎたり、形のデフォルメに拘る作もある。
会期: 6/10 - 15
会場: 東京セントラル美術館


第7回書道蛟龍会展 
書道蛟龍会展 書道蛟龍会の記事:
第7回書道蛟龍会展は、日本書道学院長の石川芳雲が主催する社中展で、これまで隔年開催が、一昨年の喜寿記念の個展を挟んで4年ぶりとなり、新人も参加し会場も銀座画廊の広いところに移った。書風は沈着整正な筆致を根幹にして、書法を正確に習得し、一生稽古を自任して、着々と歩みを進める。芳雲は今では珍しい漢詩の自詠詩が作品の素材に扱われ、数名の自作の詩の出品者もいる。参考陳列には清人尺牘を並べる。先師中平南谿作は、自詠の江上春興で、芳雲は自詠の偕楽園で、太く堂々と厚みを入れ、客員の二宮奇龍など二尺八尺に意欲作を見せる。学書的な姿勢の謙虚な書展に注目できる。


第15回槙社文会展 
第15回槙社文会展は、会を創立した青山杉雨が親しんだ近現代の中国書画家の書画と篆刻作品を「寄鶴軒の雅友展」として特別展観する。本展は謙慎書道会の常任理事以上142名は三尺十尺を基準に、理事28名は二尺八尺、評議員356名は謙慎サイズに意欲作を展開する。今年は入り口の大作には昨年の槙社文会名誉会長賞、槙社文会会長賞を受賞した重本天空と南部圀順が、金文と草書大字書で意欲を示す。第一室から平素の書風を着実に進展させ、緻密な構成で気迫を充満させる方向に全体が進む。ここの形を作るデッサン力は、堅実なもので明るさと伸びやかな表情が見えるのが特色だ。 こうした中で際立って書風を大胆に変えたり創意を前面に押し出す作家は極めて少なく、この辺に伝統書道の本道を歩む姿勢が見られる。出品作品は青山杉雨、成瀬映山の遺作を掲げ、主な出品者は梅原清山、稲垣菘圃、東山一郎、樽本樹邨、村寄鴨畦、種村山童、岩井韻亭、中林蕗風、高木聖雨などが並ぶ。
会期:  5/20 - 25
会場: サンシャインシティ文化会館
2F展示ホールD


第44回太玄会役員書展 
 第44回太玄会役員書展は、例年通り半紙大の統一した寸法に、額も同じサイズで354名の審査会員以上が参加する。作品は小品に書く字の書風を工夫する姿が極めて多彩だが、役員や幹部クラスの作品は、作品を大きく見せる配慮が伺えて、豊かさを示す。反面、多くの審査会員クラスは全体への効果の配慮が薄く、文字の萎縮や不調和も目に付く。この点、師風を追う作は安定して、創作の難しさを示す。
会期:  5/13 - 18
会場: 東京セントラル美術館

第35回玄和書道会選抜春墨展 
 第35回玄和書道会選抜春墨展は、故明石春浦が創立した社中で、没後会員の移動を経て着実に発展し、89名が参加する。会の理事以上(毎日展会員以上)の18名が三尺八尺で、他は二尺八尺である。書風は濃墨で羊毛の行草連綿が強く重く流れる傾向が強い中で、細い線や古典の書風を取り入れたり、連綿に独特の工夫を開拓する作家なども登場し、作風は春浦風の変貌を追う傾向と新たな書風の開拓など、多極化の方向を見せる。記念展で特別展示した明石春浦の遺作2点は、明るさを撒き散らす動きで新鮮さを今も放っているのが印象的だ。
会期:  5/13 - 18
会場: 東京銀座画廊・美術館



第31回 かな書展 
 第31回かな書展は、日本橋高島屋の8階に設けられた特設会場で、現代のかなの中でも情感豊かな寒玉書道会の作品と、他に東京の奥田家山の一門や現日会の富岳凌雲、四国の藤若美風の社中などの大字、中字、少字かなで構成される。今年は役員クラスの作品がそれぞれ自由に従来の書風の拘束から離れて、表現の豊かさを意欲的に示し、こうした他流試合の大きな場所で全員のかなが動いている光景は極めて異彩であり、注目できる。中でも書いていくほどに変化が突然表れ、この変転に大きな魅力を孕む。一方会員でも巻子に長年培った力量を発揮したり、半切などの作品に自分の表情を表し、作品が生き生きとする。

 恵まれた会場に場をわきまえた作風であるところから、現代のかなの生活空間の中での機能をよく果たしている。
会期:  5/8 - 5/13
会場: 日本橋高島屋8階ギャラリー


第25回不手非止同人展 前田次郎作品展 
不手非止展は、今から31年前に10名の30代後半から40代の書家と評論家が、筆とペンで同人誌不手非止を刊行し、沈滞した書道界に新鮮な風を吹き込んで注目された。鳩居堂画廊が開館すると、4月の一番いい時期に同人展を始め、今年はその25回である。同人には物故者などで現在は5名だが、4階では前田次郎の個展が忍の一文字を、大作や小品に22通り書き分けて斬新な仕事を披露している。大作は2枚のパネルに忍の文字を分割し、表情の多面性を試みる新表現法である。

 3階の不手非止同人展は、一人5点から7点の出品で、浦野黛岳は金文に言葉のいわれを現代文で記し、表現は平明であり、今年は太い篆書に近い作もでた。小野寺啓治は、書4点に4姿を書き分け空間の配置に自然観をいれたりし、絵三点は桜と城シリーズで満開を描く。小木太法は品格についての持論を4副に消息風に淡々と気分を変えて記す。片かな表現の作品では墨色の美しさを問う。野中吟雪は草書と金文で、迫力で大作を主張するのも特色だ。4者4様で主張が明確だ。
会期:  4/22 - 27
会場: 鳩居堂


第54回静心書学会展

第54回静心書学会展は謙慎書道会の岩井韻亭が主宰する社中展で、54年の実績は技術的にも非常に高いレベルに達し、200名を越す参加者は日展入選や謙慎の理事クラスが50名で、二尺八尺に行草連綿体の多彩な作品を披露する。この行草連綿調は、線が文字に絡む妖しい動きを過分に発揮し、今では関東の行草連綿体のメッカとなっている。他は半切で隔年で開催し、211名が参加している。書風のルーツは明清の行草連綿をそれぞれの作家が追い求め、極細の遊糸の姿も登場した。現代文は各者それぞれ自分の好きな書を書き、ここには個人の顔がはっきりと出る。

 反面行草体は韻亭の妖艶な動きを追う傾向を中心にして他に、それぞれ専門の古典や書きぶりで自分の書風を試みる。漢字には金文の造形を楽しむ人もいて、また、かなの作品もあり、親子三人による書風の展開は極めて珍しい。

会期:  4/16 - 20
会場: 東京銀座画廊・美術館


「文化功労者高木聖鶴・書の世界」展
高木聖鶴 書の世界

 「文化功労者高木聖鶴・書の世界展」が岡山県立美術館の主催で大々的に開催されている。この美術館は近年開館した豪華な設備を誇り、絵画を中心にしていて書家の個人展は始めてとなる。ここに高木聖鶴氏の代表作、172点を途中で1回一部陳列変えをして公開するという大々的な催しである。豪華な階段を登り会場に入ると、大字がなの屏風を中心にして大字作品が並び、二室、三室と進むと中字作品、小字作品や、さらに再び大字作品の二尺八尺に一行書きなどの作品が並ぶ。作品の多くはパブリックコレクションを中心にして屏風、軸、額、巻子作品で構成され、このうち120点は総社市に寄贈されている。

 高木聖鶴氏の書は、漢字とかなの特色を同じ視点で研究し、漢字の強さとかなの優美さを追求して兼ね備え、この両者の特色の違いの幅を広げて、その都度の混じり方を多彩に表現している。作品には日本芸術院賞受賞作品や六曲屏風展出品作品など注目作を並べる一大宴である。

会期:  3/25 - 4/13
会場: 岡山県立美術館


日中書法の伝承展

 今年の三月で謙慎書道会展は70回を数え、記念企画として「日中書法の伝承」展を開催する。

 中国の資料からは帖学派、碑学派、新出土資料の三つの柱で集結させた名品に、篆刻作品を並べる。明末清初から清末・民国に亘る書の動向を観望でき、民国以降は新出土資料で本邦初公開となる簡讀資料や青山杉雨氏旧蔵の敦煌文献などに加え、中国古代の印章、篆刻芸術を展示する。

 日本の資料では各時代の特徴的な写経、平安時代の世尊寺の歴代の古筆と女性の筆とされる古筆を集め、江戸から近代の作品も陳列して現代の書壇のつながりを感じられる遺品が陳列される。
 
時代とともに変遷する日中書法の姿が明解になり、新たな見識が深まる展覧会である。

会期:  3/13 - 22
会場: 東京美術倶楽部


第57回奎星展

 第57回奎星展は、前衛書道を生みだした専門の書道団体の仕事であり、今年は会場が広くなった為に、東京都美術館の第一棟に移動し、作品をゆったりと陳列した。これによって一点づつの表現ははっきりとして前衛書の持つ個人個人の内面的な表現が、十二分に発揮されるようになった。作品の傾向は、伝統書を抽象化して作品化する傾向と、書の内容や様式から完全に切りはなれて、まったく新しい線芸術を開拓し、この表現で書的な充実感を表す二つに大別される。この両者のうちで、今年大いに注目できるのは、後者の書の書習や、拘束から離れた自由なほうの仕事に、新鮮で意欲的な表現が何点も登場していることに注目したい。前衛書も60年をすぎると、前衛書そのものの伝統が確立していて、この中に新しい表現を生み出すのがいかに難しいかよく示している。

文字性に依存する作品と、非文字性の作品とが、同時に目に映ってくるのは、それだけ美術品化する実績が生まれたといえる。

 上野の森美術館では気鋭の作品が並び、前衛の可能性を見せているのが心強い。

会期:  3/7 - 12
会場: 東京都美術館


東京三余会美しいかな書展

 第21回東京三余会展は、神戸の桑田三舟が東京に出講して指導した東京支部の社中展で、競いの無い楽しい書展を目指す。目標は「彩白墨華」の主題のもとに、会員が研鑚し、白をいかに美しく見せるかに大きなテーマがある。その上でかなの線の自由な活躍と形の作り方にも、古筆に則った姿をベースにしながら、それとは違う現代のセンスによる意外な方向やリズムを展開している。ここでは今日のスピード化された社会における平安時代のかなの美しさを今風に調和させる日本人独特の感性を追い求め、余白の美しさを真正面から問うている。

 ここでは、表装にも現代的な装飾美を追い求めていて、料紙の色彩とかなの表現の三位一体による装飾工芸の世界を切り開いているのも大きな特色である。注目作品は、桑田三舟が病後の新作で、静かな中に豊かな表現をし、寺岡棠舟は金泥紙に細字がなを乱舞させる三十六枚の意欲作があり、他に秋山和也、垣木香舟、傳田舟蘭などがいる。

会期:  3/4 - 9
会場: 東京銀座画廊・美術館


第70回謙慎書道会展

 昭和8年に西川寧を中心にして創立された謙慎書道会は、今年70回の記念展を迎え、漢字、かな、現代文、篆刻の古典派の仕事をくっきりと見せて、現代書の先端を歩く姿をはっきりと示す。注目の第一室は世代も若返りかつての巨匠を中心とするいくつかの系統的な作品の傾向がなくなり、一人一人の書風がそれぞれ自立して、自分の世界を積極的に展開する作家の充実した集団展のイメージへと変わる。とりわけ関西の整理整頓主義の影響は完全に無くなり、自由に大小を書き連ね行間の密集する作品や、形にデフォルメを際立たせ、創作意欲を溌剌と示す作が多いのに注目する。漢字は各書体で変貌し、作家が新たな書体や書風に挑戦するのも目立つ。
際立つのはかな作家が大作で意欲を示し、この書風が創作意欲を漲らせていることだ。中字、大字かなの格調の高さを良く示す。篆刻は自分の作風を前面に押し出す傾向が見えて、一局集中から多様化し、その中でも規律を守る姿勢には貴重さがある。

会期:  2/28 - 3/5
会場: 東京都美術館



第48回現日選抜書展

 第48回現日選抜書展は、会場を国立新美術館の広い空間に移して、ここに同人147、同人格62、準同人164の計373点の作品を並べた。この中で、昨年の東京都美術館における夏の本展で受賞した10名の作家が、4尺×4尺にそれぞれ自分の書を、漢字、かな、現代文で表現し、この作品の創造性豊かな新鮮さに魅力が集中する。形がとぼけた人や、バランスに意外性を持つ作品が登場して、書の表現に新しいジャンルを切り拓く。その他で注目するのは、同人の幹部クラスと中堅作家で、ここの作品は一人一人が自分の発想で組み立てるので、類型書が無く、テーマを持つ作家もいるので、見ていて非常に新鮮だ。
 
こうした個人作家の集合団体は、現在のところ、ここが最重要右翼であり、楽しい反面、不釣合いや駄作もあるのも事実だ。特に同人格、準同人は、これからの人が多いが、工夫を試みている点では、貴重な姿勢である。鍛錬主義よりも、発想主義の展覧会である。

会期:  2/20 - 3/3
会場: 国立新美術館


「牧水をかく−榎倉香邨の書」展

 現代かなの巨匠である榎倉香邨が、5年ぶりに4回目の個展を「榎倉香邨の書−牧水を書くー」と題して、大作13点を並べて開催した。この個展は美しいかなをただ書くだけでなく、歌人牧水が44年の生涯を歌で詠った人間の純粋な愛と自然を賛美する心の遍歴を追い求めて、榎倉香邨自らが旅をし、生き方を自分と重ね合わせて、そこから発信する姿を率直にかなに表現している姿を表している。

 作品は大作13点からなり、大字がなや中字、細字の凛々しい線が、明快なリズムと率直な表現で、感情の趣くままを歌と線と形を一体化させて、素直に伸び伸びと表現している。かなもついにここまで人間の感情を率直に表現するところに、作者の計り知れない純真な叫びが見て取れる。金箔を裏打ちに使ったり、蝋箋に濃墨で濃いかなや、杉原紙に細字がなを縦横に書き、大字がなでは線の叫びも率直である。

会期:  2/12 - 18
会場: 三越本店


第61回書道芸術院展
 第61回書道芸術院展は、15名の代表が大作を制作し、第一室正面に一同に並べる。その反対側の壁に、注目作家や受賞候補作、受賞作が並び、広い会場は意欲的な作品で熱気を孕む。ここは漢字、かな、現代詩文、篆刻、刻字、前衛書の5部門が互いに競い合い、理解し合い、現代書の進む方向を全力で推進している。基本的精神は、絶えず前進するという前衛精神にあり、各自の書風は留まることなく一人一人が自分の書風を次々と前進させている。

 今年の特色は、漢字の大字書に表情を工夫する作品が集まり、前衛書道では面で表す線の変化に幾多の試行作品が登場する反面、同じ試行方法もあり、この書の進む方向の難しさを良く示す。刻字部門は掘り方を変えた作品も登場し、かなはいくつかの特色を持って制作する方向に歩んでいる。中心となる現代詩文書は多くの作家の傾向が同一方向に進み、この中で新鮮な書風を開拓するには、発想そのものを改革する必要がある。
会期:  2/6 - 11
会場: 東京都美術館



第24回産経国際書展「新春展」
 産経国際書会は、本年度から国立新美術館の使用が許可され、ここで第24回産経国際書展”新春展”を特別に開催した。この展覧会は60歳以下の作家による大作と、役員から無鑑査までの出品作家の中品で構成され、新しい会場と言うことで意欲的な制作をみせた。作品は漢字、かな、大字書、現代文、前衛書道までが出品され、中でも大字書に積極的な作品が見られた。また役員や幹部の作品は、やや荒削りで構成などの密度を削ぐ作品もあり、全体に前向きの野性味がでて、熱気だけは伝わる。こうした中で、ベテラン作家が新鮮な見ごたえのある作品を魅せていて、会の方向を牽引している。

 一方例年行われる上野の森美術館での第22回産経国際書会代表会は、一階のメインルームに並ぶ役員、幹部はいずれも各作家固有の表現を魅せ、変化に富む作品で見ごたえがある。ここは極めて伝統的な書風から、現代性のデザイン化される作品まで幅広く混在し、その点でも現況をよく見せている。
会期:  1/23 - 2/4
会場: 国立新美術館


第50回記念東京書道会展
 第50回記念東京書道会展は、記念展に会の創立者であった松井如流の作品を特設会場に並べ、ここに大作の「円通」の屏風や代表作の「坦夷」などを陳列して、地下一階には如流の折帖の手本を数十点並べたり、大きな文字で書いた上田桑鳩と香川峰雲宛の書簡を紹介した。また地下一階と地下二階の大広間には大作を幹部が競って書き、会の書風の多彩化を見せた。

 平常の展示室では会員が充実作を出して、50回記念にふさわしい意欲をみせた。ここは戦後新しく生まれた大字書の二大団体の一つで、太い線を大担に使い、空間一杯に埋める傾向が特色である。墨色はここ独特の淡墨で淡く、濃墨作品もあり、行草の連綿にも細い線を折るように使うのなどがある。金文、篆書、隷書も多く、行草書は太らし、素朴さや、野獣性を潜む雄渾さが印象深い。
会期:  1/20 - 27
会場: 東京都美術館


第49回太玄会書展
 第49回太玄会書展が東京都美術館の一階と、今年から地下一階、地下2階が増えて、3会場で開催された。一階には書風の進む方向に類似性を伴う会派と、一人一家風で独自の書風を展開する会派の十六会派の作品が並び、各社中色を鮮明に見せて変化に富む。会全体の流れでは、純正さを飛び越えた独自性を尊重する文人思想で、文字は可読性や書法の筆技、古典に基づく創作の衝動が重要な役割をはたしていて見ごたえがある。

 幹部たちの作品は、書体も行草連綿調中心から広がる傾向にあるが、練度や構成などが昨年よりも着実に前進し、大地にしっかりと根をはっている。

 地下二階の彫刻展示室には中堅幹部たちによる大作が並び、文字の大小、行の変化、筆法の工夫などを活かし、全体的にバランスのいい作品が並び、社中色の特色をよく工夫している。かな作品の登場に大いに期待したい。
会期:  1/11 - 18
会場: 東京都美術館


現代の書 新春展
− 今いきづく墨の華 100人展 −
 今日の書道の隆盛を生みだした毎日書道展は、現代から未来を見据えた書道の創作活動を前面に押し出して活動し、”今いきづく墨の華”をキャッチフレーズにして現代の書 新春展を開催している。この書展は毎日書道会の巨匠たち27人による和光ホール27人展と、セントラル会場100人展の二本立てで、新春の一大イベントとなっている。和光ホールでは役員作家、東京セントラル美術館では60歳以上の審査会員の中から選ばれた作家の作品が並んでいる。

 これらの書は今最先端を歩む現代派の作品群であり、内容は漢字、かな、現代文(近代詩文書)、大字書、篆刻、刻字、前衛書道からなり、表現は多彩を極めている。中でも現代文と大字書と前衛書道は、戦後新しく誕生した書の表現領域であり、日本が独自に生みだした現代の書芸術の華である。また漢字、かな、篆刻、刻字は伝統的な古典書を現代の日本の感覚で再構築していて、極めて日本色の強い表現である。
会期:  1/5 - 13
会場: セントラル美術館


第74回書壇院展
 現書壇では、最も古い歴史を誇る第74回書壇院展が、国立新美術館の誕生で今年から急に会場を一棟分増加され、ここに幹部の臨書作品を並べて開催された。

 広い第一室の役員作品は、世代ががらりと変わり、個々に書風を違えた生命力のあふれる作品が並び、清らかさと明るさを見せている。この特色は毎日展系の中でも際立って品位の高い、伝統性を踏まえていて、漢字の集団として注目すべきものである。しかも幹部に続く中堅層にも意欲作が続くのも大きな魅力となる。おもな注目作をひらうと長井蒼之、飯山素木、柳田純一、柳沢朱篁、小林畦水、町田玄洞、星光陽から内閣総理大臣賞の町田雨篁などが、漢字で魅力を発揮し、かなでは中村春洸、陶山由利子など個性色が強い。

 臨書作品では横山蒼風、中山孤舟、有賀秋竹、玉井菁雪、安部跳龍などが内容の豊かな表現をしている。いずれも三尺十尺などの大作で見ごたえがある。
会期:  12/16 - 22
会場: 東京都美術館


第29回日本書道学院展
 第29回日本書道学院展は、今展から従来の都立産業貿易センターから東京都美術館に会場を移し、いよいよ本格的な発表の場を確保して、意欲作が数多く並んだ。学院は競書雑誌「書の光」を発行し、全国から出品される幅の広さを特色とし、雑誌は漢字部、かな部、条幅部、賞状部、調和体部、で構成され、ここから育った指導者層が会の中核を成す。

 書展は顧問の高木聖鶴、谷村憙齋、王偉平、高木聖雨、客員に勝瀬景流、清水路石、皆川雅舟、吉田東霞、和中簡堂で、審査長は石川芳雲である。

 ここの特色をあげると漢字では個性的な書風が積極的に表現され、中でも故中平南谿門下に多くの興味ある作風が見られる。また各役員や芳雲の書風を吸収し展開するなど賑やかさもある。かなは勝瀬景流の書風を継承し発展させるものが多く、篆刻は和中簡堂の指導で整正な印風だ。全体では純正な書風をしっかりと表現し、実用書部の賞状作品は珍しい仕事である。
会期:  12/09 - 12/14
会場: 東京都美術館


書道芸術院秋季展
 財団法人書道芸術院が主催する書道芸術院秋季展は、現代書の中でも極めて絶えず前進する創作意欲を、前面に打ち出した意欲的な選抜展で、名誉顧問、常任顧問、参与の12名、財団役員38名、審査会員選抜57名、入選50名の計157名が陳列される。

 この本年度の意欲作は、中品でまとめられ各自が独自性を強調する。サイズが一般展覧会サイズなので、構成は手馴れて感覚的な表現に、その得意な領域を良く示す。

 漢字、かな、現代詩文書、篆刻・刻字・前衛書の全ての分野を包括しているのも、この会の特色だ。

今年は創立60周年なので、書道芸術院創立六十周年記念役員作品巡回展も8階会場で開催され、50人の作品が並ぶ。この書展は全国13会場を巡回するもので、なかなか見ごたえのある上品な作品展だ。
会期:  10/02 - 10/07
会場: 東京セントラル美術館


2007 秋の独立選抜書展

 大字書と言う一字の表現で書の魅力の全てを表現する新しい書道芸術は、世界のどの民族にも理解されやすい造形として大きな注目を集めている。
 この運動を最初に開拓し、現代書のパイオニアとなる独立書人団の秋季展が、今華々しく開催されている。
 ベテランの作家から執行部が200点に選別した作品は、それぞれ自分の主張と表情を持ち、見ていて安心できる。
 今年の特色は、広い空間を自由に動かす線の運動が縦や、横に長い線を大胆に使い従来のまともな形を中心に安定させる方向から一歩脱却した表現が登場して注目できる。
 墨色も真っ黒の光から、淡墨でにじみの深い断層の表現や、線の表情も板や丸太や蛇のような独自性豊かな方向が開拓されている。
 大作部門と小品部門、これに準会員の選抜作などこれからの作家の注目作品も選別されて並ぶ。

会期:   9月19日(水)〜10月3日(水) 
午前9時より 午後5時
会場: 東京都美術館


第24回 産経国際書展

 第24回産経国際書展は、今回から待望の東京都美術館で開催されることになり、その第一室には最高顧問、副会長、理事長、副理事長を筆頭に執行部の意欲作と受賞作が一堂に集まる。中央は内閣総理大臣賞の村越龍川の篆書三字が四方に明るく、生き生きと伸びる線で気品を放ち、会場を圧する。隣の朱色の紙に書く理事長の斉藤香披は、草書のデフォルメに肉厚い直線状を賑やかにいれて、大小の気ままな調和を謳歌する。
 その左の本多道子は現代文で、淡墨を太くねじ込むようなこもる線で、動きをうずくまるような姿で表して、高円宮賞を受賞した。
 この第一室には古典的な書から現代的な大字書や現代文、前衛書道まで一堂に並び、一人一家風の主張を高らかに謳う。
 書式も縦横自由で楽しめるが、第二室からは、二尺八尺など形式化した作品が林立し、混然とする。

会期:   9/1 − 9/16
会場: 東京都美術館


第24回 読売書法展

 ”本格の輝き”を標榜する第24回読売書法展は、新設された国立新美術館で開催され、初の展示法を披露した。白い壁面と、高い天井の広い会場から、さぞゆったりとして見やすい展示方法を期待した。が現実は逆で、役員室のみ二段掛けで多少の余裕を見せるものの、他の部屋はすべて三段掛けでぎっしりと埋まり、圧迫感の中で見入る。そこに繰り広げられる表現は、古典派の真髄を発揮し、一作に表す制作の細やかな配慮と技術の高さは、見事である。こうした姿勢は現代の書における古典派作家の真摯な姿勢であり、多彩な表現から現代書の豊かさを知る。
 
 役員室はいづれも志向性の富んだ表現豊かな姿が並び、余裕を示す。各部屋は細かく仕切られ、作品は密集するが、その中でどの作も着実な表現をして、内容の高さを見せている。

会期:   8/24 − 9/2
会場: 国立新美術館


第55回 書星展

 第55回 書星展は、超大作、大作、六曲屏風などに、指名で自分の書風を積極的に表現する。書星会は古典派の中では最も現代的な志向を試みる意欲団体で、その仕事は今後の古典派書のパイオニア的使命が高い。書体は金文、篆書、隷書、楷書、草書、行書とすべてに渡って採用され、古典の書風を巧みに現代化させる。
 ここには濃墨や淡墨の表現も活用され、実験的な制作が繰り広げられる。また、臨書の大作をする指名作家もいて、この表現にも形臨ではなくて作家の解釈を前面に打ち出す。こんなところにも現代の頼もしい姿が見られる。宮負丁香、伊場英白、浅見百意、現代文の小林碧桃、須藤恵鑒、林韶舞などの中堅、気鋭や、浅見錦龍など、注目作が多い。

会期:   7/28 − 8/3
会場: 東京都美術館

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