尹湾出土簡

神烏傳

漢代以前までは甲骨・青銅器・石刻といった、一種独特なものに文字を記すことが多かったのに対し、木に記したものを木簡、竹に記したもの竹簡という。当時の社会が密接な関係を築けば築くほど、不変的な書写材料より、実用的な面を重視したものが誕生していった。
 
 漢代草書芸術の傑作として『神烏傅』がある。『神烏傅』は標題は隷書だが、その他は全て章草〈注:参照〉で書かれている。書風は張芝(ちょうし)の力強く雄大な草書に似ているとされるが、そこに波磔を強調する字を交えたり、字の懐を広くするなど、洒脱さをも醸し出す。章草の運筆は、才気を孕みながら法にとらわれずに自在に運ばるという、独特な線質を持ち、連綿でつながる字なども現れる。筆勢は外に広がって大きく見せ、後に草書の発展と完成におおいに貢献することになったとされている。これらの見解から、章草の成熟期は前漢中期頃であると推測される。

 『神烏傳』にやや近い書風として馬圏湾(ばけんわん)新出土、居延新出土、甘粛新出土木簡から類似した簡が見られる。

注:前漢中期~末期に隷書の早書きによって発生した。波磔があり点画を省略した単体の書体をさしている。
 

『神烏傅』

これから内容を充実させていきます。
書道ジャーナル研究所トップへ